相澤はなぜか言葉尻を濁した。
 注文は若手がまとめて取ることが多いので、まさか知っているとは思っていなかった。

 そのとき、陽茉莉はカクテルメニューのページに最近知ったお酒の名前を見つける。

「あ、私、これにしようかな。ミモザ」
「ミモザ? 珍しいね」
「はい。最近、行きつけのバーで教えてもらったんです。この前初めて飲んで、甘くて美味しかったから」
「行きつけのバーって、あの大柄のママがいるところ? えーっと、フルムーン」
「ハーフムーンですよ」

 陽茉莉はくすくすと笑う。
 潤ちゃんは、格好は女性だけれど声や体格は男性のままだ。〝大柄のママ〟と表現するところに、相澤の気遣いを感じた。