「どうせだったら、総合プロデュースしたいんだよな。ロビーのトイレに置かれたハンドソープから、室内のアメニティまで統一感を持たせて」
「そうですね。私のイメージはやっぱり〝花〟かなぁ。例えば、アメニティはお客様の好みに合わせた花の香りを用意するとか」

 陽茉莉と相澤はL字ソファーに垂直に向き合って座り、今日一日見て回った後の作戦会議をする。

「それだと部屋に着いたときにアメニティが揃っていないことになるから、お客様によっては不快に思わないかな? アメニティは季節に合わせた花の香りのものをデフォルトにしておいて、バスグッズは好みのものを用意するのはどう? その選択肢に、昼間に言っていた花びらのバブルバスも入れるとか」

「それ、いいですね」
「あと、アメニティの見た目なんだが、ビニール包装じゃなくてミニ容器入りのほうがちょっと高級感が出るかと思ったんだ。単価が上がるが、これだけの部屋数だから値上げ幅はかなり抑えられるんじゃないかと。まあ、これに関しては生産管理部に相談しないとなんとも言えないが」
「容器入り?」
「化粧品のサンプルみたいなやつだよ。ちょっと洒落た小さなプラスチック容器とかさ。例えば──」