陽茉莉がそう言うと、相澤は「それなら……」と同意したけれど、やっぱり不満げだった。そんなに悠翔君と一緒に寝たかったのだろうか。

 ──都会の癒やし、極上のリゾート。

 新たなカノンリゾート東京のコンセプトを思い返す。

「この代金を支払って泊まりに来る位だから、お客様はきっと『さすがはカノンリゾート東京』と思わせるようなサービスを期待していますね」
「だな。俺も、低価格で勝負するよりは、多少値段がかかっても付加価値によるプレミアム感を持たせる戦略のほうが、勝算が高い気がしてる」
「今日初めて来ましたけど、ホームページで見たよりもだいぶゴージャスな雰囲気のホテルで驚きました。もっとモダンな感じだと思っていたのに、思ったより西洋風って言うのかな?」

 ヨーロッパのベルサイユ宮殿っぽいイメージ?と陽茉莉は付け加える。

「それに合わせて、商品提案したほうがいいかも。うーん、例えば裏コンセプトで〝マリーアントワネットのようなひととき〟なんてどうだろう?」
「それだと、ターゲットが女性だけになっちゃいますけど、いいですかね?」
「あー、確かにそうだな。この部屋の造りだと、女性グループと同じ位カップルが多い気がする」