「すごいねー。あっちにはくまさんもいるよ」
「え、どこ? ……本当だ!」

 悠翔は頬を紅潮させ、目をキラキラさせている。

「悠翔、陽茉莉。部屋に上がるぞ」

 悠翔と庭を眺めながらキャッキャとしていると、背後から声をかけられた。チェックインを終わらせた相澤が、カードキーを見せるように片手を上げる。
 部屋はシティビューセミスイートと呼ばれる、セミダブルベッドが二つ置かれたタイプだった。〝セミスイート〟を謳うだけあり、六十五平方メートルある室内には透かし格子になった仕切りが設えられており、ベッドがないほう──窓際のエリアには大きなソファーセットが設置されていた。

「すごい。ここ、かなりお高いんじゃないですか?」
「ルームチャージの正規料金が十三万くらい」
「十三万!」

 陽茉莉は驚いて、素っ頓狂な声を上げる。