彼女には、幼い日に母親が作った特製の護符を渡した。
 ただ、護符の効き目は、ときの経過と共に薄くなる。このまま放っておけば、いつか彼女はまた襲われる。
 そう思うと、いてもたってもいられなかった。

 まず、すぐにアレーズコーポレーションの中途採用試験を受けた。超一流商社から中堅の総合リラクゼーション会社への転職。誰の目に見ても奇妙な転職で、周り──特に前の勤務先の関係者からは随分と止められたが、後悔はなかった。

 社内の遠い距離から彼女を見守り、異動のタイミングで多少無理を言って陽茉莉を自分の部下に引き抜いた。

 ──それなのに。

 今日、陽茉莉は相澤に一言も告げずに高塔に会いに行った。
 と言うことは、陽茉莉自身は自分から自立することを望んでいるのかもしれない。