会社の人達が猫かぶりにすっかり騙されているけれど、自分に関してはそうは問屋が卸さない。

「とぼけないでください!」
「いや、本当にわからない。何をどう勘違いしたのか、興味深いな」

 相澤がこちらを見つめ、にやりと笑う。

「ば、ば、ばかー!」

 顔を真っ赤にした陽茉莉はソファーに置かれていた丸クッションをポスンと相澤の顔に投げつけ、立ち上がる。

 間違いなくからかっている。
 本当に、とんでもない猫かぶりだ。

プイッとそっぽを向いて床に置いた鞄を持つと、陽茉莉はそそくさと自室へと向かったのだった。