「れ、礼也さん。嫌な気配、消えましたか?」
名前で呼ぶだけなのに、なぜかものすごく恥ずかしい。
その途端、相澤はなぜか体を起こして片手で顔を覆った。
陽茉莉は慌てて体を起こすと、ちょこんとソファーの端に座り直した。
「あのー、礼也さん?」
陽茉莉はおずおずと、相澤に声をかける。
答えてはくれないけれど、自分から離れたということはもう大丈夫だということだろうか。
「なあ」
「はい?」
相澤はぽすんと反対の端に座ると、深い溜息をついてからこちらを見つめた。そのまっすぐな眼差しに、落ち着きを取り戻しつつあった心臓がまたドキンと跳ねる。