「か、係長。まだ嫌な気配は取れないんですか?」
お願いだから、もう止めてほしい。半ば涙目になりながらも、顔を真っ赤にした陽茉莉はか細い声を絞り出した。
こちらをまっすぐにこちらを見つめる相澤の瞳が、切なげに揺れる。
「……礼也」
「へ」
「礼也って呼んでほしい。家で〝係長〟って呼ばれると、仕事中みたいで疲れる」
「あ。ごめんなさい」
陽茉莉は慌てて謝罪した。
いつも〝係長〟と呼んでいるので、家でも無意識にそう呼んでしまっていた。確かに、プライベートな時間まで役職で呼ばれたくはないだろう。
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