「うそっ」

 今日は、きちんとお守りを持ち歩いた。邪鬼の声は一度も聞かなかったし、姿も見かけなかったはずだ。
 それなのに、嫌な気配がする?

 自分のほうに相澤の顔が沈んできて、首元に鼻を寄せる。
 次の瞬間、陽茉莉は飛び上がるほど驚いた。柔らかな温もりが肌に触れ、つつつっとなぞるような感覚。

「か、係長……」
「黙って」

 唇が離れ、吐息が肌に当る。ぞくぞくとしたものが体の奥から込み上げるのを感じた。

(これって、邪鬼の気配を追い払う一環!?)