「どこ行ってたの?」
「……ちょっとしたお出かけです」
「ふーん。ちょっとしたお出かけね」

 なぜが相澤の瞳が不機嫌そうに眇められた気がした。

「すげえ、臭い」
「えっ?」

 もう涼しい季節だしそんなに汗もかいていないはずなのに、そんなに汗臭かっただろうか。もしくは、お酒の匂い?
 陽茉莉は狼狽えて相澤から逃れようとしたが、がっしりと捕らえられてそれは叶わなかった。

「嫌な気配がする」

 滅多に聞かないような、不機嫌さを滲ませた声だった。