心配するかもしれないと思って、先ほど『遅くなる』とだけメッセージを送った。すぐに既読マークは付いたものの返信はない。

 いつものようにカウンター席に座ると、ジントニックが置かれる。陽茉莉はこのミントの香りと爽やかなのどごしが好きだった。

「元気にしていたの?」
「はい」
「そう。仕事はどう?」
「今、上司が大きな案件を担当しているから、私も補佐役で入っているんです」
「へえ。上司って、猫な彼かしら?」
「はい。猫な彼です」

 陽茉莉はくすっと笑いを漏らす。