──オマエ、イイナ。ホシイナ。

 今にもあの声が聞こえてきそうな気がして、陽茉莉が走り出したそのとき──。

「ギャッ!」

 すぐ背後から短い悲鳴が聞こえた。

「ひっ。何?」

 陽茉莉はびくりと肩を振るわせて立ち止まると、恐る恐る後ろを振り返る。

 ──ガサガサッ。

 道路の脇の茂みから物音がした。

 恐怖心から、陽茉莉は一歩後ずさる。けれど、すぐにそこに何か小さな生き物がいることに気が付いた。