「まあ、それはそうなんだけど。礼也は別に気にしてないと思うよ。悠翔の面倒見たり、ご飯作ったりしているんでしょ? それに、そもそも相手が新山ちゃんだし」
高塔はひとりでうんうんと頷いている。
なんだ、その『そもそも相手が新山ちゃんだし』って。
上司が部下の面倒を見るのは当然ってことだろうか。この猫かぶりな人からそんな殊勝な台詞が聞けるとは驚きだ。
「今はそうかもしれませんけど、係長だっていつ恋人ができるかわからないし、私は最低限の身を守る術を得て早く出ていかないといけないじゃないですか」
「え? うーん、それは心配しなくても平気じゃないかな」
高塔はなぜか何かを哀れむように、苦笑したのだった。