食事が目の前に置かれる。だし汁のいい匂いが鼻孔を掠めた。
店員が退室すると、高塔ははあっと息を吐く。
「やめたほうがいいと思うよ。祓除師になるっていうことは、邪鬼がいるところに自ら赴くってことだ。今のように礼也の元で守られていれば遭遇しなかったような危険に遇う可能性がある」
「でも、神力が強い人間が少なくて困っているんですよね?」
「それはそうなんだけど、新山ちゃんがこっちの世界に足を踏み込むことに礼也は反対すると思うんだ。ほらっ、琴子さんのこともあるから……」
高塔は言いづらそうに言葉尻を濁す。
きっと、礼也は自身の母親のように陽茉莉が邪鬼に呑まれて壊れてしまうことを恐れて反対する。
そう言いたいのだとすぐにわかった。