「じゃあ、そういうことで」

 男の子がくるりと踵を返す。

「あ!」

 陽茉莉は声を上げた。
 数メートル先まで歩いていた男の子が、慌てたように振り返った。

「これ、ありがとう! 大事にするね!」
 陽茉莉はもらったばかりの赤いお守りを片手に持って、大きな声でお礼を言う。

 飼い犬を助けてもらったお礼の品がお守りなんて、変わったお返しだ。けれど、陽茉莉はそれがちっとも嫌ではなかった。

 男の子は少しだけ口の端を上げると、今度こそ走り去っていった。