心当たりと聞いて、すぐにこれまでの恐怖体験が脳裏に甦った。それに、神力が強いと言われて思い当たることがあった。陽茉莉の母方の実家は元々神主の家系だ。そういうことも、影響しているのかもしれない。

 時折陽茉莉の前に現れる人ならざる者達は、一様に「コレイイナ」「モラッチャオウ」と言っていた。

(あれは、私の体を乗っ取ってしまおうとしていたの?)

 底知れぬ恐怖心が湧いた。

「邪鬼に呑まれるとどうなるんですか?」

 陽茉莉は震えそうになる声を必死に抑えながら、恐る恐る高塔に尋ねる。