それと同時に、ふと疑問が湧く。

「あの……。係長のお母さんは、今どうしているのですか?」

 その瞬間、柔和だった高塔の顔が強張った。以前、相澤にこの話題を振ったときと全く同じような反応に、陽茉莉はハッとする。

「すいません。出過ぎたことを聞きました」

 陽茉莉は咄嗟に謝罪する。すると、それまで黙ってふたりのやり取りを聞いていた詩乃がほうっと息を吐いた。

「何も知らぬのでは不安にもなるであろう。琴子は、邪鬼に呑まれて死んだ」
「邪鬼に呑まれて?」

 相澤の母親が鬼籍に入っていることは、陽茉莉もなんとなく気付いていた。けれど、〝邪鬼に呑まれて〟とはどういう意味だろうか。