けらけらと高塔は笑う。
「おむつのときから?」
高塔の正確な年齢は知らないが、せいぜい三十歳過ぎにしか見えない。
そんな昔の記憶があるのかと陽茉莉は怪訝に思った。
「礼也は狼神と人の半妖だけど、俺は狐神なんだ。わかる? 狐のあやかし」
「狐神?」
初めて聞く言葉だ。陽茉莉は高塔をまじまじと見つめる。
「そ。それで、琴子さん──礼也の母親の元で邪鬼退治をしていた」
「係長のお母さんの元で?」
「ああ。邪鬼を退治してかつ悪しきものを完全に祓うには、〝神力〟が必要なんだ。けど、俺達あやかしが持っているのは〝妖力〟だけ。だから、俺達は邪鬼を力尽くで押さえることはできても、祓って隠世に送ってやることができない。逆に、神力があっても人間は弱い。だから、普通は神力を持つ人間とあやかしが複数人で組んで、邪鬼退治をする」
「神力……」