「あ、本当だ。よく見つけたね」
「うん。あっちにもっとあるよ」

 悠翔が嬉しそうに笑い、大きな木の下を指さす。そこには確かにどんぐりがたくさん落ちていた。きっと、この木から落ちたのだろう。

「持って帰ってもいい?」
「持って帰るの? じゃあ、お家に帰ったらコマを作ろうか?」
「コマ?」
「うん。ここに穴を開けて、爪楊枝を刺すの」
「うん、作りたい! 幼稚園のとき、作ったことあるよ」

 悠翔は大きく頷くと、また地面に座り込んで綺麗などんぐりを探し始める。陽茉莉はその傍らで、周囲を見渡した。

 境内には何人かの参拝客がいた。売店の前ではカップルがおみくじを紐に結びつけている。