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 参道の階段を上って境内に入ると間もなく、車の走る音も聞こえなくなる。
 俗世と隔離されたような神社特有のこの独特な雰囲気が、陽茉莉は昔から好きだ。

 八幡神社は想像したよりも大きな神社だった。
 中央には社があり、それとは別にお守りやお札を売る売店がある。敷地内に生える大木の合間からは木漏れ日が差し込み、地面を優しく照らしていた。

「お姉ちゃん、どんぐり見つけた」

 手を繋いでいた悠翔が急にしゃがんだので何かと思えば、小さな手にはどんぐりが二つ乗っかっていた。