「あ、食べた。よしよし、元気になるんだよー」

 陽茉莉は嬉しくなって犬の首周りをわしゃわしゃと撫で回した。
 首輪はしていないけれど、こんなに大人しいのだから飼い犬だろう。

「明日になったら、飼い主を探す貼り紙作るね」

犬が何かを言いたげにこちらを見る。陽茉莉はにこりと笑ってその頭を撫でた。

 翌日、陽茉莉が急いで小学校から帰ってくると、その犬は姿を消していた。
 外に出たそうな仕草をするのでお母さんがドアを開けてやると、あっという間に走り去ってしまったのだという。