悠翔はそこでようやくこれ以上我が儘を言っても通じないと悟ったようで、口を引き結ぶと目に涙を一杯に溜めた。

「新山。すまないが、悠翔を頼む」
「はい、わかりました。行ってらっしゃい」

 陽茉莉はこくりと頷くと、相澤を見送った。
 コツコツという足音が遠ざかり、やがて聞こえなくなる。それとほぼ同時に、悠翔がうわーんと泣き出した。

「僕も行きたかったああぁぁぁ」

 廊下に突っ伏して、わんわんと号泣している。本当に、よっぽど行きたかったようだ。