日曜日の昼下がり、悠翔はいつになく我が儘を言って駄々を捏ねていた。これから仕事──これは、恐らく邪鬼退治なのだと思う──に行く相澤に付いていくと言って、なかなか聞かないのだ。

 こんなやり取りを見たのは、ここに来て初めてかもしれない。
 しかし、相澤のほうも頑として引かなかった。普段の悠翔に甘い様子からするとここまで駄々を捏ねられたら「仕方がないなぁ」と折れてしまいそうなものだが、ここは絶対に引けない理由でもあるのだろうか。

「悠翔君、お姉ちゃんと一緒に待ってようよ」
「やだ。僕もお兄ちゃんと行く」
「悠翔、いい加減にしろ」

 先ほどまでは穏やかだった相澤の口調が、一段低いものへと変わり、表情も険しくなる。