しかしながら、そう都合よく記憶は飛んでくれなかった。
相澤は特に何も言ってこなかった。それが逆にいたたまれない。
そんなこんなで、今日は朝からまともに相澤の顔を見られずにいる。
「あ、相澤係長と高塔副課長だ」
お昼休み。いつものように一緒に食事していた若菜が陽茉莉の後方を見て呟く。
陽茉莉は『相澤』という単語に動揺して、思わず箸で掴んでいたポークソテーをぼとりと皿の上に落とした。
「最近、ふたりでいるのをよく見かけるよね。うちの職場の女性社員もキャーキャー言ってた。イケメン二人組で、眼福だって」