陽茉莉は咄嗟に、鞄を漁る。

「ない。なんで!」

 あるはずの手応えがどこにもなく、ハッとする。

(お守り、会社だ……)

 今日、鞄の中身を整理したときにデスクの上に置いた。そのまましまい忘れたのかもしれない。

(逃げなきゃ!)

 咄嗟に踵を返し、もと来た道へと戻ろうとする。

 けれど、それは叶わなかった。
 酔いが醒めない体は言うことを聞かない。ふらついたところで、後ろからガシンとのしかかられ、陽茉莉がバランスを崩す。