「ヒヒッ!」

 耳障りな声が聞こえた。

「コンナトコロデ、ミツケタ」

 陽茉莉はびくっとして足を止めると、周囲を見渡した。
 声の発信源はすぐに見つかった。雑居ビルの合間から、ぽっかりと穴の空いた闇のような目でこちらを見つめている。

「う、うそ……」

 ここ最近、この声を聞くことはおろか姿を見かけることすらなかったので、すぐには信じがたかった。けれど、そこにいたのは紛れもなく〝人ならざる者〟だった。