「係長には関係ありませんよーだ! そもそも、恋人でもないんだから人のプライベートにいちいち干渉しないでください! 余計なお世話です!」
ああ、酔ってないって言ったけど、やっぱり私は酔っているのかもしれない。
普段なら「申し訳ありません」と一言謝って終わらせられるような場面なのに、絶対に言わないような台詞が口から飛び出した。陽茉莉は、ようやくタクシー会社に電話を始めた相澤の腕を振り切ると、駅の方向に走り始める。
「おいっ、新山!」
背後から焦ったように呼びかける声がしたけれど、振り返らなかった。
今は、相澤の顔を見たくない。がむしゃらに走って角を曲がる。
──そのときだ。