「この時間、飲んだ帰りが多くでみんな乗ってるな……」

 何台かのタクシーが通りかかったが、どれも乗客がいた。陽茉莉はその横で、めまぐるしく思考を回転させる。

(なんでこんなことになってるの!?)

 自分は会社帰りに久しぶりにハーフムーンに寄って、潤ちゃんに愚痴をこぼしていたはずだ。
 いつものジントニックから始まり、三杯飲んで四杯目に柄でもなくウイスキーを頼んだ。その辺りで潤ちゃんにそろそろやめておけと言われたところまではうっすらと覚えている。

 陽茉莉はあまりお酒が強くない。いつもなら一杯、多くても二杯しか飲まないので、潤ちゃんもおかしいと思ったのだろう。