首を横に振ったので、まだなのだろう。相澤は財布からカードを取り出すと、支払いを済ませる。カウンターの女はカードの裏面のサインを見て、何かを考えるように瞬きする。

「相澤さん……。もしかして、あなたって陽茉莉ちゃんの上司?」
「そうですが」
「やっぱり! まさか、陽茉莉ちゃんと一緒に住んでいるの?」

 こくりと頷くと、女は「あらぁ、いつの間に」と口元に手を当ててにんまりと笑う。

「あなたのこと、陽茉莉ちゃんからよく話を聞くわ」

 陽茉莉が自分のことを外で話しているというのは、意外だった。一体どんな風に話しているのだろうかと、興味半分、怖さ半分で聞き返す。