「いらっしゃい」 聞き覚えがある声がした。先ほど、電話に出た人物の声だ。 そして、カウンターの一番奥ですやすやと眠る陽茉莉の姿を見つける。 「新山、起きろ。帰るぞ」 肩を揺すると、陽茉莉は一瞬だけ目を開けたが、すぐにまたとろんとまぶたが落ちる。 「もうやめておきなさいって止めたんだけど、どうしてもって聞かなかったのよ」 カウンターの向こうにいる女が、そう言って肩を竦めた。 「ご迷惑をおかけしました。連れて帰ります。お代は?」