『もしもしー。あなた、陽茉莉ちゃんの知り合いかしら? 陽茉莉ちゃん、ちょっと飲み過ぎちゃっておねむになっちゃったのよ。迎えに来られる?』


    ◇ ◇ ◇


 教えられた場所は、会社から二駅ほど離れた駅にひっそりと佇む雑居ビルだった。ビルの入口にある入居案内板を見ると、目的の『Bar ハーフムーン』は四階にあるようだ。数人乗ればいっぱいになるような古びたエレベーターを降りるとすぐにドアが二つあり、そのうちの片方に『Bar ハーフムーン』と書かれた看板がぶら下がっていた。

 ドアを開けると、内側に付けられたベルがカランコロンと鳴る。
 暖色のランプに照らされた薄暗い店内は、こぢんまりとしていた。