「くそっ。どこにいる」

 同居しているし、部下であるとは言え、陽茉莉のプライベートまで踏み込むのは嫌がられるのではないか。
 それをして『やっぱり、同居を解消したいです』と言われるのではないか。

 そんなことを恐れて一線を引いていたことが、今になって悔やまれる。

 なかなか既読が付かないことに苛立ち、今度は電話をかける。
 何回か呼び出したが繋がらず、四回目のかけ直しでようやく電話が繋がった。

「もしもし? こんな時間までどこにいるんだ?」

 電話口に向かって喋りかけると、少しの沈黙があって女にしては低い声がした。