陽茉莉は眉を寄せて声で問い返す。
 相澤は基本的に、遅くなっても家に帰って食事を取る。既に相澤の家に世話になるようになって三週間近く経つが、それは最初から変わらない。
 だから、レストランになど行っていないはずだ。
 
「うーん。でも、総務部の服部さんが言っているのよ? すごい相澤係長のファンだから、見間違えるなんてないんじゃないかしら?」

 楠木さんは顎に手を当てて首を傾げる。

「一昨日の夜に見たらしいんだけど──」

 その瞬間、ドキリと胸が跳ねた。
 一昨日の夜。それは、ちょうど相澤が『夕飯はいらない』と言った日だった。確かにその日、相澤は夕食を家で食べなかった。

 帰宅したのも、日付が変わるような時間だった気がする。