「どうした?」
「まだ時間があるから、お見送りをしようかと思いまして」

陽茉莉が見送りにくるとは夢にも思っていなかったようで、相澤の目が僅かに見開く。そして、少し照れたようなはにかんだ笑顔を浮かべた。

「ありがとう」

 ドアノブに手をかけようとした相澤が、ふと何かを思いだしたように振り返った。

「そうだ。忘れないうちに伝えておく。今日の夜は夕食いらない。ちょっと用事があって遅くなる」
「そうなんですか? わかりました。悠翔君と一緒に食べておきます」
「助かる」
「行ってらっしゃい! また後で」