「あれ、今日は早いな。おはよう」
「あ、係長。おはようございます」

 早いと言っても、十五分しか早くない。
 まだ髪の毛に寝癖が付いている陽茉莉に対し、相澤は既に完璧に準備が仕上がっていた。
 アイロンの効いたシャツにきっちりとネクタイを締め、スーツのジャケット片手に持っている。もう片方の手には鞄を持っているので、もう家を出るのだろう。

「係長はいつも早いですね?」

 朝の出社時間をずらしてほしいと言ったのは陽茉莉だが、ここまで早く出ることを想定していたわけではなかった。

「ああ。ちょっとやりたいことがある。始業時間前はどこからも電話がかかってこないから、仕事が捗るんだ。早朝出社、やり始めるとなかなかいいよ」

 相澤はそう言うと、玄関へと向かう。
 ちょうど居合わせたことだしと、陽茉莉は玄関まで見送りに行った。靴紐を結び終えた相澤は、そこに立つ陽茉莉の顔を見て怪訝な顔をする。