「こんな時間まで、どこに行ってたんだ?」
「どこって……、行きつけのバーです」
「誰と?」
「え? ひとりですけど?」

 夕食は同期の若菜と一緒に食べに行ったが、ハーフムーンはひとりで行った。

「ふーん」

 相澤は陽茉莉を見下ろしたまま、目を眇める。そして、おもむろに体を屈めると、陽茉莉の首筋に顔を寄せた。 

「ひゃっ!」

 陽茉莉は思わず声を上げる。
 触れられてはいないけど、息がかかるのがわかる程の、触れられそうな距離だったのは確かだ。
 相澤からは、石けんの匂いに混じってほんの少しだけお酒の香りがした。