そして何度目かの冬がやってきた。
極寒のこの地にもなんとか慣れ。
雪の扱いも少しはわかってきた。

今年もご多分に漏れず大雪の厳しい冬になるといわれている。
人間の生活のことだけ考えれば。
できるだけ住みやすい天候を求めるのだろう。

でも俺はこの地に来て思い知った。
人間以外の動植物たちが必死に生きているのを。

田舎だからなのかもしれないが。
東京(あっち)にいたときは見たことがない動物に、それはもうたくさん遭遇した。

狸、猪、ウサギ、キツネ、鹿。
熊に遭遇したときはさすがに生命の危機を感じたが。

彼らが、切り崩されてエサが少なくなってしまった山からおりて、人里へ来ざるを得なくなったのも生活道路で遭遇する理由のひとつだから。
人間の傲慢さと罪深さを感じずにはいられない。

だから今残っている自然はできるだけこのままにしてほしいと思っている。
その自然が残るゆえに。厳しい気候にもなる。
だがそうやって自然の多い中で生きることは。
自然の与える厳しさだけではなく、恩恵もたくさん受けているんだ。

そのひとつが雪だ。

雪解け水は水道水にはない多くのミネラルを含み、水田や畑の水として欠かせない。

それが酒を造る米にも当然影響している。
だから雪は俺たち蔵人にとって悪いことではない。
むしろありがたいのだ。

そんなふうに思えるようになるなんて不思議だけど。
ここで自然とともに生きているから…
実感しているのかもしれない。