親方には俺の心の内など容易に読めるのだろう。

「雪穂も…東京に行きしなは同じだったはずだ。慣れない土地で生きていくには…まず周りに合わせるしかないけんの」

そうだ…。
俺にはここで頼れる人は親方と雪穂だけ。
仕事でも上司である親方の言うとおりにするのが一番いい。

「はい…。頑張ります…」

「じゃあ、お食事にしましょうね」

雪穂がそう言って親方から配膳していく。

次に俺のところにやってきた。
卵焼きに大根おろし、鯵の開き、青菜の白和え、味噌汁そして白いご飯。
和の朝食の王道だ。

最後に自分のところに配膳して雪穂も席につく。

「ほんならよばれぇかの」

「え?」

「あ、いただこうか、という意味です」

「あぁ…」

マジで感じる言葉の壁。
方言に慣れるのはもしかすると一番難しいかもな、なんて思いながら目の前の料理を眺める。

両手を合わせて「いただきます」と言い、軽く頭を下げた。

まずは味噌汁から。
大根、人参、白菜等の野菜がたくさん入っている。
一口啜ると野菜の甘味が感じられた。
出汁もよく利いている。

「旨い…」

思わずそんな感想が漏れた。

米は艶があり、一粒一粒が立っている。
当然味もよかった。

魚も野菜もすべてが素材の持ち味を最大限に引き出されていた。