「あー、そっか。今が初恋だったね。でもさ、これで恋愛小説も書けるようになるんじゃないの?」
「…………まあ、そのうちね。考えとく」
さやかに食い下がられ、愛美はそう答えた。
今も想像でなら、書けないこともないかもしれないけれど。とりあえず今は自分の気持ちだけでいっぱいいっぱいで、この経験を小説にしようなんて発想は浮かばないのだ。
「うん……、そっか。まあ、今回はどんなの書くかわかんないけどさ、頑張ってね。書けたらコンテストに出す前に、あたしたちに一回読ませてよ」
「私も読んでみたいわ。楽しみにしてますわよ」
「うん、もちろん!」
小説というのは、自己満足で終わってはいけないと愛美は思っている。
自分では「いい作品が書けた」と思っていても、客観的に読んで評価してくれる人に一度は読んでもらわないと、それが本当に〝いい作品〟かどうか分からないのだ。
親友になりつつある二人が最初の読者になってくれるなら、これ以上喜ばしいことはない。
「その代わり、忖度ナシでズバズバ批評させてもらうから。覚悟しといてね」
「ええ~~~~!? お手柔らかにお願いっ!」
「ハハハッ! 冗談だよ、冗談っ! ――さ、帰ろっ」
愛美のブーイングをさやかが笑って受け流し、三人は改めて寮への帰路についた。
****
寮のさやかたちの部屋でお茶を飲み、自分の部屋に帰ってきた愛美は、荷物をすべてしまい終えると机に向かった。
開いたのは買ってきたばかりの原稿用紙……ではなく、ネタ帳兼メモ帳として使っているあのノート。開いたページには、夏休みに千藤農園で書き留めてきた小説のネタがビッシリだ。
「よしっ! 書こう」
まずは真新しいノートに、プロットを作成する。
書こうと決めたのは、子供時代の純也さんのエピソードを基にした短編である。都会で育った男の子が、あるキッカケで農園で暮らすことになり、そこで色々な初めての〝冒険〟をする、というストーリーだ。
「…………まあ、そのうちね。考えとく」
さやかに食い下がられ、愛美はそう答えた。
今も想像でなら、書けないこともないかもしれないけれど。とりあえず今は自分の気持ちだけでいっぱいいっぱいで、この経験を小説にしようなんて発想は浮かばないのだ。
「うん……、そっか。まあ、今回はどんなの書くかわかんないけどさ、頑張ってね。書けたらコンテストに出す前に、あたしたちに一回読ませてよ」
「私も読んでみたいわ。楽しみにしてますわよ」
「うん、もちろん!」
小説というのは、自己満足で終わってはいけないと愛美は思っている。
自分では「いい作品が書けた」と思っていても、客観的に読んで評価してくれる人に一度は読んでもらわないと、それが本当に〝いい作品〟かどうか分からないのだ。
親友になりつつある二人が最初の読者になってくれるなら、これ以上喜ばしいことはない。
「その代わり、忖度ナシでズバズバ批評させてもらうから。覚悟しといてね」
「ええ~~~~!? お手柔らかにお願いっ!」
「ハハハッ! 冗談だよ、冗談っ! ――さ、帰ろっ」
愛美のブーイングをさやかが笑って受け流し、三人は改めて寮への帰路についた。
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寮のさやかたちの部屋でお茶を飲み、自分の部屋に帰ってきた愛美は、荷物をすべてしまい終えると机に向かった。
開いたのは買ってきたばかりの原稿用紙……ではなく、ネタ帳兼メモ帳として使っているあのノート。開いたページには、夏休みに千藤農園で書き留めてきた小説のネタがビッシリだ。
「よしっ! 書こう」
まずは真新しいノートに、プロットを作成する。
書こうと決めたのは、子供時代の純也さんのエピソードを基にした短編である。都会で育った男の子が、あるキッカケで農園で暮らすことになり、そこで色々な初めての〝冒険〟をする、というストーリーだ。