当初の予定では、秋物の洋服や靴だけを買いに行くつもりでいたのだけれど。これで立ち寄る店が二軒増えた。

「ねえねえ、百円ショップと本屋さんに寄らせてもらっていい?」

 原稿用紙とペンなら文房具店で買うよりも百均の方が安上がりだし、本は図書館で借りるよりも買ってしまった方が返却する手間が(はぶ)ける。

「いいよ。じゃ、十二時に食堂に集合ね」

「うん、分かった」

****

「――それにしても、スゴい荷物だねえ……。愛美、重たくないの?」

 すべてのショッピングを終えて寮に帰る途中、重そうな袋をいくつも抱えた愛美に、さやかが心配そうに訊ねた。

「うん……、大丈夫!」

 愛美は気丈に答えたけれど、本当はものすごく重かった。
 五十枚入りの原稿用紙が五袋とペンが入っている百円ショップの袋と、資料にしようと買い込んだ本が何冊も入っている書店の紙袋、それプラス洋服や靴などが入った紙袋。
 重いけれど、どれも必要なものだから愛美は自分で持って帰りたいのだ。

「あたし、どれか一つ持ってあげようか? ムリしなくていいから貸してみ」

「…………うん、ありがと。お願い」

 少し迷った末、愛美はさやかの厚意に甘えることにした。本の入った紙袋を彼女に手渡す。

「愛美ってば、友達に意地張ることないじゃん。こういう時は、素直に頼ればいいんだよ」

「うん……。でもわたし、『周りに甘えてちゃいけない』って思ってるの。だから、今のこの状況も実は不本意なんだよね」

 愛美には身寄りがない。〝あしながおじさん〟だって元を(ただ)せば赤の他人。いつまでも頼るわけにはいかない。――だから彼女は、「早く自立しないと」と思っているのだ。

「んもう! 愛美はいいコすぎるの! まだ子供なんだから、もっとワガママ言っていいんだよ? 『ツラい』とか『淋しい』とかさあ。あたしたちにはどんどん弱音吐いちゃいなよ」