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――その二日後に無事珠莉がイタリアから帰国し、九月。二学期が始まった。
「――いやー、助かったぁ。愛美が宿題教えてくれたおかげで、あたしも恥かかずに済んだわ。ありがとね」
三限目終了のチャイムが鳴るなり、さやかが愛美の席までやってきた。
「そう? 役に立ててよかった」
始業式の日は授業がなく、ホームルームが終わるとあとは生徒たちの自由時間。寮にまっすぐ帰るもよし、街へショッピングに出るもよし。
なので、さやかが愛美に放課後の予定を訊ねた。
「愛美、このあとどうする? 寮に帰る? それともどっかに買いもの行く?」
「う~ん。お買いものは行きたいけど、制服のまんまはちょっと……。一度寮に帰って着替えて、お昼ゴハンが済んでからにしようよ」
他の同級生は、何の抵抗もなく制服のままで街に繰り出しているらしいけれど。愛美はそれに抵抗があるのか、まだ慣れないでいる。
服を着替えることで、学校とそれ以外のスイッチを切り替えたいのかもしれない。
「あたしはどっちでもいいけど……。愛美がそうしたいんなら、あたしもそうするよ。ねえ、珠莉も行く?」
さやかはいつの間にか近くに来ていた珠莉にも話を振った。
「お二人が行くのなら、もちろん私もご一緒するわ」
珠莉という子は初対面の時はツンケンしていて、あまり好きになれないタイプだと愛美は思っていたけれど。半年近く付き合ってきて分かった気がする。
本当の彼女は、淋しがり屋なんだと。――そう思うと、彼女に対する反感とか苦手意識がなくなってきた。
「うん。じゃあ三人で行こう」
「しょうがないなぁ。愛美がそう言うんなら」
さやかもやっぱり、なんだかんだ言っても愛美と仲良しでいたいし、珠莉との距離も縮めようと努力しているんだろう。
――というわけで、この日の放課後は三人で、街までショッピングに繰り出すこととなった。