「――んじゃ、あたしはそろそろ部屋に戻るわ。荷解き、あとは一人で大丈夫?」

 さやかは愛美の荷物をしまうのをだいぶ手伝ってくれ、ほとんど片付いた頃にそう訊ねた。

「うん、ありがとね。助かったよ。―あ、そういえばさやかちゃん。夏休みの宿題、もう終わった? わたしは全部終わらせたけど」

「それがねぇ……、数学の宿題が全っっ然分かんなくて。愛美、明日でいいから教えて?」

「いいよ。わたしでよければ」

「サーンキュ☆ じゃあ、また晩ゴハンの時に食堂でね」

 愛美が頷くと、さやかは淋しそうにルームメイトがまだ戻っていない自分の部屋に帰っていった。

 ――一人になった部屋で、愛美は半袖のカットソーから伸びた自分の細い腕をまじまじと眺めた。

「わたし、あんまり焼けてないなあ」

 幼い頃から愛美は色白で、夏に外で遊んでもあまり日焼けしなかった。それが元々の体質のせいなのか、育った環境によるものなのかは彼女自身にも分からない。
 夏休みに海へ行ったという友達は真っ黒に日焼けしていて、「健康的でいいなあ」と愛美は羨んだものである。
 農園へ行って毎日健康的に夏を過ごせば、自分もこんがりいい色に日焼けすると思っていたけれど――。

「……まあいっか。日焼けはオンナのお肌の天敵だもんね」

 あとからシミやそばかすとして残ることを思えば、焼けない方がよかったのかもしれない。

「――さて、片付けが終わったらまたあの本読もうっと。それまでもうひと頑張りだな」

 愛美は腰を上げ、残りの荷物の片付けに取りかかった。