純也さんに夢を応援してもらえることも嬉しかったけれど、親友のさやかというもう一人のファンができたこともまた、愛美は同じくらい嬉しかった。

(よし、頑張ろう! 二人に喜んでもらいたいもん)

 夏休み前まではこの学校に慣れること・流行に追いつくことで精いっぱいで、小説を書くヒマなんてなかった。
 でも、半年近く経った今は少し時間的にも心にもゆとりができてきたから、書き始めるにはちょうどいい時期かもしれない。

「――あ、そうだ。ご家族の写真、送ってくれてありがとね」

 さやかは夏休みの間に、約束通り愛美のスマホにメッセージをくれた。キャンプ先で撮った、家族全員の写真を添付して。

『これがウチの家族全員だよ('ω')』

 そんなメッセージとともに送られてきた写真には、さやかと彼女の両親・大学生くらいの兄・中学生くらいの弟・幼い妹・そして祖母(そぼ)らしき七十代くらいの女性が写っていて、「さやかちゃん()ってこんなに大家族なんだ!」と愛美は驚いたものだ。

「いやいや、約束してたからね。ウチ、家族多くて驚いたでしょ?」

「うん。今時珍しいよね。あれで全員なの?」

「そうだよ。あと、ネコが一匹いる」

「へえ……、ネコちゃんかぁ。可愛いだろうなぁ」

 ちなみに祖母は父方の祖母で、祖父はすでにこの世にいないらしい。

「わたし、普通の家庭って羨ましい。将来結婚して家庭を持ったら、そんなあったかい家庭にしたいな」

 あの写真からも、牧村家の温かさが伝わってきた。さやかの家は、愛美の理想とする家庭そのものだ。

「それ言うんなら、あたしはアンタの方が羨ましいよ。兄弟姉妹がいっぱいいるじゃん」

 自分だって四人兄妹(きょうだい)の二番目なのに、さやかは施設でたくさんの〝兄弟姉妹〟と育ってきた愛美を羨んだ。