畑や田んぼは山梨の施設にいた頃、毎日のように見てきましたけど。実際に農場で生活するのは初めてです。すごく楽しそう!
 この夏はのびのび過ごして構わないんですよね? 誰に遠慮することなく?
おじさまだって、わざわざわたしの生活態度を千藤(せんどう)さんご夫妻に監督させたりしないでしょう? だって、わたしはもう高校生なんだから!
 では、おじさま。これから荷作りがあるので、これで失礼します。
 夏休み、思いっきり楽しんで、いろいろ学んできますね。 かしこ

           七月十七日   夏休み前でワクワクしている愛美』

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 ――その後、無事に荷作りも完了し。それから四日後。

「じゃあねー、愛美! また二学期に! 夏休み、楽しんでおいでよ!」

 寮に居残る生徒以外はみんな、それぞれの行き先へと向かって校門を出ていく。
 さやかは学校の最寄り駅までは愛美と一緒だったけれど、駅からは行き先が違うのでそこで別れた。――ちなみに、珠莉は今ごろ、とっくに成田(なりた)空港に着いているだろう。実家所有の黒塗りリムジンが迎えに来ていたから。

「うん! ありがと! さやかちゃんもいい夏休み送ってね!」

「サンキュ! 夏の間にメールかメッセージ送るよ」

「うん、楽しみにしてる! じゃあ、バイバ~イ!」

 ――さやかは埼玉方面に向かうホームへ。愛美はここから地下鉄で新横浜まで出る。そこから東京まで出て、そして――。

東京(とうきょう)からは、長野新幹線か。おじさま、新幹線の切符まで送ってくれてる」

 新幹線に乗るまでの交通費はお小遣いで何とかなるけれど、新幹線の切符代はさすがに高い。高校生が自腹を切るのはかなり痛い。

(自分が行くように勧めたんだから、新幹線の切符くらいは自分で負担してあげようって思ったのかな? おじさまって律儀(りちぎ)な人)