プライドの高いお嬢さまも、さやかにかかれば形無しである。渋々だけれど、彼女についていった。

 ――数分後。さやかが二つ、珠莉が一つ段ボール箱を抱えて愛美の部屋に戻ってきた。

「愛美、お待たせ! これだけあったら足りるでしょ」

「まったく、感謝してほしいものですわ。この私に、こんな手伝いをさせたんですから」

(珠莉ちゃんってば! 〝手伝い〟ったって、段ボール箱一コ運んできただけじゃん)

 珠莉の態度は恩着せがましく、愛美もさすがにカチンとはきたけれど。ここは素直に感謝すべきだろうと大人の対応をして見せた。

「ありがと、二人とも。じゃあ、荷作り始めるね。あとはわたし一人でできるから」

 二人も荷作りやら準備やらがあるだろうし、これ以上手伝わせるのは申し訳ない。……特に、珠莉にこれ以上文句を言われるのはたまらない。

「そっか、分かった。んじゃ、あたしたちはこれで」

 さやかと珠莉が部屋を出ていくと、愛美は早速荷作りにかかるのかと思いきや。

(おじさまに、手紙書こうかな)

 ふとそう考えた。とりあえず、期末テストが無事に終わったことと、夏休みの準備を始めたことを報告しようと思ったのだ。

 いつもは勉強机の上で書くのだけれど、今日はピンク色の座卓の上にレターパッドを広げ、ペンを取った。

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『拝啓、あしながおじさん。

 お元気ですか? わたしは今日も元気です。
 一学期の期末テスト、無事に終わりました。わたしは今回も学年で一〇位以内に入ることができましたよ。喜んでくれるといいな。
 もうすぐ楽しみな夏休み。しかも、高原の農園で過ごす一ヶ月間! すごくワクワクしてます。