――結局、そのお礼状は書き直されないままポストに投函されたのだった。

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 ――そして、七月の半ば。

「さぁて、期末テストも無事終わったことだし。夏休みに向けての荷作り始めようかな」

「そうだねー。今回はあたしも珠莉も成績まずまずだったし」

 ちなみに、愛美は今回も一〇位以内。珠莉が五〇位以内、さやかも七〇位以内には入った。

「はー、私もこれでやっとお父さまとお母さまに顔向けができますわ」

 ホッとしたように珠莉が呟けば。

「それ言ったら、あたしもだよ。中間の時ボロボロだったからさあ、お母さんに電話で泣かれちゃって大変だったよー」

 珠莉よりも順位が下だったさやかも、うんうん、と同調した。

「今回も成績悪かったら、夏休みも補習ばっかりで楽しめなかったもんねー」

 愛美がしみじみと言う。……まあ、彼女にそんな心配はなかっただろうけれど。
 初めての恋を知ってから、愛美は時々妄想がジャマをして勉強に集中できなくなっていた。それでもこの好成績だったのは奇跡的である。

「――にしたって、アンタの部屋も荷物増えたねえ……。特に本が」

 さやかが愛美の部屋の本棚を見て、感心した。
 ちなみに、さやかと珠莉の部屋の本棚の蔵書は二人分を合わせても、この本棚の三分の二か四分の三くらいだろう。

 愛美の部屋にある作りつけの本棚には教科書や参考書のほか、小説の単行本や文庫本・雑誌類がビッシリ入っている。
 まだ入学して三ヶ月でのこの増えようからして、彼女がかなりの読書家だということが(うかが)える。

「えへへっ。古本屋さんでコツコツ買い集めたの。新書もあるけどね」