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――五限目は英語の授業。でも愛美は授業を聞く傍ら、せっせとレポート用紙に〝あしながおじさん〟へのお礼状を認めていた。
もちろん授業は大事だけれど、彼女としては一秒でも早く感謝の気持ちを伝えたかったのだ。
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『拝啓、あしながおじさん。
おじさまはとてもいい人ですね!
信州の高原へのお誘い、本当に嬉しかったです。ありがとうございます!
〈わかば園〉にアルバイトとして帰るのは、わたしには切なすぎました。卒業した後まで、あそこに迷惑をかけたくありませんでしたから。
レポート用紙にシャーペン書きでゴメンなさい。実は今、英語の授業中なんです。いつ先生に当てられるか分からないので、近況はパス。 ――』
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「――では、相川さん」
「はっ、ハイっ!」
英語担当の女性教師に指名された愛美は、レポート用紙に一言書き記してから慌てて姿勢を正した。
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『あっ、今当てられました!』
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「この一文の助動詞〈should〉は、どう訳すのが適切か分かりますか?」
「えっと……、『~すべきである』……でしょうか」
ちゃんと授業は耳に入っていたので、答えることはできたけれど。
「正解です。でも、授業はちゃんと集中して聞きましょうね」
「……はい。すみません」
集中して聞いていなかったことを注意され、愛美は顔から火を噴いた。
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『先生の質問にはちゃんと答えられましたけど、注意されちゃいました。
では、これで失礼します。 愛美』