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『拝啓、あしながおじさん。
お元気ですか? わたしは今日も元気です。
実は先ほど、〈わかば園〉の聡美園長からお電話を頂きました。『夏休みの予定が決まってないなら、アルバイトとして施設に帰ってこない?』って。
わたしはあの施設の経営状態をよく知ってます。それなのに、バイト代につられてのこのこ帰るなんてできません。
あの施設がキライだったわけじゃないですけど、そんな口実で帰るしかないなんて哀しいです。
他にいい過ごし方があれば、園長先生も安心されるんじゃないかな、と思うんですけど。おじさま、わたしはどうしたらいいでしょうか?
お返事、お待ちしてます。
六月七日 愛美』
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――その四日後。午前中の授業を終えて寮に戻ってきた愛美が郵便受けを覗くと……。
「……あ! 来てる来てる! おじさまの秘書さんからの手紙!」
一通の封書が届いていた。茶色の洋封筒で、差出人の名前は〈久留島栄吉〉となっている。
「それって、こないだ愛美が出した手紙の返事?」
「うん。夏休みの過ごし方について相談してたの。――さて、何て書いてあるのかなー♪」
さやかの問いに答え、封を切って文面を読んだ愛美はすっかりテンションが上がってしまった。
「……へえ。わあ! スゴーい! 信じらんない!」
「ちょっと愛美! 何て書いてあんの? 教えてよー!」
「フフフッ♪ それよりお昼ゴハン行こう♪ お腹すいたよー♪」
「……ダメだこりゃ」
ルンルン♪ とスキップしながら食堂に向かう愛美を、さやかはただ呆れて見ているしかなかった。