さやかに話を振られ、愛美の反応が(ワン)テンポ遅れる。そこにさやかが目ざとくツッコんできた。

「やっぱりヘンだよ、愛美。どうしちゃったのよ?」

「うん……。ねえ、さやかちゃん。わたしね、金曜日からずっと純也さんのことが頭から離れないの。夢にも出てくるし、授業中にもあの人のことばっかり考えちゃって。……この気持ち、何ていうのかな?」

 さやかはその言葉を聞いて、全てを理解した。

「それってさあ、〝恋〟だよ。愛美、アンタは純也さんに恋しちゃったんだよ」

「恋? ――そっか、これが〝恋〟なんだ……」

 愛美もそれでしっくり来た。生れてはじめての感情なのだから、誰かに教えてもらわなければこれが何なのか分からないままだったろう。

「にしても、初恋の相手が友達の叔父で、十三歳も年上なんて。大変かもしんないけど、まあ頑張って。……ところで珠莉、純也叔父さんって独身なの?」

 確かに、彼くらいの年齢なら既婚者でもおかしくはないけれど。愛美は彼からそんな話は聞いていない。

「ええ、そのはずですわ。叔父の周りには打算で近づいてくる女性しかいらっしゃらないから、そもそも女性不信ぎみなんですって」

「女性……不信……」

 愛美の表情が曇る。自分だって女の子だ。好きになってもらえるかどうか。

「大丈夫だって、愛美! アンタに打算なんてないでしょ? 彼がお金持ちだからとか、名家の御曹司(おんぞうし)だからって好きになったんじゃないでしょ?」

「うん。それはもちろんだよ」

 お茶代だって、金欠でなければ自分の分は払うつもりでいたのだから。