さやかは、珠莉が怒っている原因を「彼女自身が(やま)しいからだ」と見破った。

「そ……っ、そんなんじゃありませんわ! さやかさん、何をおっしゃってるんだか、まったく」

(こりゃ図星だな)

 さやかの読みは多分当たっているだろうと愛美も思った。

「言っとくけど、純也さんとは学校の敷地内歩きながらおしゃべりして、カフェでお茶しただけだから。――おごってもらっちゃったけど」

「なんですって!?」

「はい、どうどう。――それより愛美、アンタ顔赤いよ? どしたの?」

 さやかはまだ怒り狂っている珠莉をなだめつつ、愛美の変化にも気がついた。

「えっ? ……ううん、別に何もないよ?」

 慌ててごまかしてみても、愛美の心のザワつきはまだおさまらなかった。

(ホントにもう! わたし、どうなっちゃったの――?)

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 ――それから数日間、愛美は純也のことばかり考えていた。
 夜眠ろうとすれば夢の中にまで登場し、土日は寝不足で欠伸ばかり。三日経った今日は一限目から上の空で授業なんて耳に入らない。

「愛美、なんかここ数日様子がヘンだよ。ホントにどうしちゃったの?」

 普段は大らかなさやかも、さすがに心配らしい。けれど、愛美自身にはその原因が何なのか分かっていないため、答えようがない。

 六限目までの授業を全て終え、寮に戻ってきた愛美・さやか・珠莉の三人はまず寮監室に立ち寄った。普通郵便は個人の郵便受けに届くけれど、書留や小包みなどは寮監の晴美さんが預かり、本人に手渡されることになっているのだ。
 そして今日は、愛美が待ちに待った〝あしながおじさん〟からの現金書留が届く日なのだ。